少年サッカー指導メモ

早熟な選手をどう伸ばすか——ジュニア年代の指導で気づいたこと

少年サッカー指導メモ

ジュニアからユースまで長い間指導をしていると、上のカテゴリーに上がっていくにつれて消えていく子をよく見ます。ジュニアやジュニアユースの時はすごい選手だったのに、ユース年代になると「あの子どこ行った」となる選手をよく見ます。これは色々なカテゴリーで指導をしてきて気づいたことで、全てがこの通りとは限りませんが、実際に見てきたある選手の話を振り返ります。

カテゴリーが上がると消えていく子に共通する原因

結論から言うと、原因は2つあると考えています。1つは指導者の指導の質の低さ、特にジュニア年代での指導の質です。もう1つは子どもが早熟であることです。つまり、早熟な子どもに対する指導が全くできていないということです。これは仕方ない面もあります。

ジュニア年代の指導者は、その早熟な子をジュニア年代しか見ていないので、その子がその後どういう選手になったかまではあまり見ない、気にしていないことが多いからです。もちろん、気にして見ている指導者もいます。

早熟な子への指導が見落とされがちな理由

自分の指導によってその子が将来どんな選手になっていくのかが全く見えないまま、指導を続けている指導者が多いのが実情です。ジュニア年代だけを見ていると、目の前の結果を出すことに意識が向きやすく、その先のカテゴリーでどうなるかまで考える余裕がなくなってしまいます。

特に早熟でスピードや体の強さで結果を出している子は、その場では非常に評価されやすいため、指導の課題が見えにくくなります。周りの大人が結果に満足してしまい、技術面の課題に目を向けないまま次のカテゴリーに送り出してしまうことも少なくありません。

長年の指導経験だからこそ見えてきたこと

私がなぜこのことに気づいたかというと、ジュニア、ジュニアユース、Jユース、高体連、社会人まで指導、監督をやってきた経験や、ジュニアから社会人までを持っているクラブチームで長年指導してきたためです。そのため、ジュニア年代、ジュニアユース年代で自分が行った指導で、ユース年代ではどのような選手になったかをよく見てきました。

「ジュニア時代にこんな指導をするとこんな選手になる」「ジュニアユース年代でこの指導をやればよかった、悪かった」など、反省や指導の改善を重ねてきました。社会人チームには、私が指導してきたチーム以外でジュニア時代から知っている他チームの子も多く入ってきているので、一人ひとりがジュニア、ジュニアユース年代にどんな選手だったか、どんなスタイルのチームに所属していたか、どんな練習をしてきたかを詳しく知っています。

だからこそ、その子がユース年代でどのような選手になったか、社会人になってどんな選手になったかを見てきたからこそ出てきた答えです。

忘れられない、ある早熟な選手の話

この子は私が直接指導した選手ではありませんが、将来楽しみな選手の一人だったので、ジュニアから高校までどんな選手になるのかをずっと追いかけていた子です。彼はジュニア年代からこの地域ではほぼ全員が知っているくらいの選手でした。

ジュニア、ジュニアユース年代では県トレセン、地域トレセンに入っていて、ジュニア時代にはその県で圧倒的な強さで優勝し、年末の全国大会でベスト8、個人では得点王、ベストイレブンにも入るくらいの選手でした。

当然県外のJ下部からも声がかかりましたが、家庭の事情もあり、県内の自宅から通える地元の強豪ジュニアユースのチームに入りました。ジュニアユース時代でもナショナルトレセンに入ったりしていて、スピード、強さで圧倒していました。

ジュニア時代から気になっていた点

彼の特徴は早熟な選手であることでした。ジュニア時代から体が大きくて、速くて、強い、足元もそこそこ扱える選手でした。ただ、ジュニア時代から私が気になっていたのは、スピード頼みであること、体の強さだけで相手を剥がしていること、ボールが足元に入っていなくて少し前に晒していることでした。

この感覚で成功体験、つまり相手を剥がす経験を繰り返すと、自分より速い、強い選手が出てきた時に必ず行き詰まります。それを凌駕するくらいのスピードと強さがあれば別ですが、そうでなければいずれ壁にぶつかります。

高校年代で全く通用しなくなった理由

その後、彼は県外の大阪の全国的に有名な強豪校にサッカー特待生として進学しました。しかし高校年代では全くパッとせず、トップチームに一度も呼ばれず、Bチームでも試合に出られず、BとCチームを行ったり来たりする選手になっていました。

ユース年代になると、周りは全員スピードも上がり、体も強くなるので、昔のようにスピード、強さだけでは勝てなくなります。彼はスピードと強さだけの成功体験を繰り返した結果、それしかできなくなり、高校年代では全く通用しなくなっていました。

これは明らかにジュニア、ジュニアユース年代の指導が原因だと考えています。もちろん一部本人の資質もありますが、指導の影響は大きかったと思います。

早熟な選手の指導で大切にすべきこと

特にジュニア年代に早熟だった子に対する指導は、スピード、体の強さで勝負をさせてはいけません。いかに筋肉を使わずに相手を剥がせるか、相手の重心をずらして逆をつけるか、後出しジャンケンできる選手に育成できるかがとても大事です。

早熟な選手には、筋肉に頼らせてはいけないのです。ジュニア年代の間に、体格差に頼らない技術を身につけさせることができれば、上のカテゴリーに上がってからも通用する選手になっていけると考えています。

その子は犠牲者でもある

この子はかわいそうな面もあります。ジュニア、ジュニアユース時代にあまりにもスピードがあったために、コーチからそれだけで勝負をさせられてきたので、いわば犠牲者でもあります。

コーチらが勝ちにこだわり、その子のスピードだけで勝ってきたチームだったので、その瞬間はコーチも本人も親御さんも気持ちがいいと思いますが、もっと長い目で子どもを見てほしいと感じています。

目先の勝利だけでなく、その子が上のカテゴリーでも通用する選手になれるかどうかまで見据えた指導を、私自身も大切にしていきたいと思っています。

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