少年サッカー指導メモ

基本より大事なもの——ブラジル流「遊びのサッカー」に衝撃を受けた話

少年サッカー指導メモ

私は街クラブで下は年中から上は社会人年代まで、様々な年代の指導、監督業をしています。ジュニア年代でやってきた自分の指導で、その選手が高校、社会人になってどんな選手になったかを見てきて、自分の指導に対して反省、改善や新しい指導の追加をしてきました。今の指導スタイルが確立するきっかけになった、ある練習試合での出来事を振り返ります。

街クラブが指導の実験場になった理由

私にとってはこの街クラブが一つのラボになっていて、指導の試行錯誤を繰り返して今の私の指導スタイルが確立しています。クラブチーム立ち上げで直面した5つの壁——2003年からの23年でも書いていますが、この街クラブを立ち上げた当初はいくら指導をしても全く勝てない状態が続いて大変苦労しています。

その苦労の中で、指導のやり方を何度も見直してきました。今振り返れば、あの試行錯誤の日々があったからこそ、この先に紹介する気づきにもたどり着けたのだと思っています。

転機になったある練習試合

私の最大の気づきであり、今の私の指導哲学になっている大元は、あるスポーツ少年団との練習試合でした。このチームのコーチは高卒でプロを目指してブラジルまで武者修行して、最終的に怪我でプロにはなれなかったですが、本場のサッカーを生で体験している若者でした。

後にブラジルで3年間、指導者としてジュニア年代の指導をしていたそうです。そのチームはまだチームではなく、スクールとして活動していて、素人の子どもたちもいました。この頃はウチのチームも少しずつ勝てるようになっていたので、負けないだろうと思っていました。しかし15分のゲームを何本かやっても、一度も勝てなかったのです。

圧倒的な差を見せつけられた相手チーム

相手チームは子どもたちが物凄く楽しそうに笑いながらサッカーをやっていて、生き生きしていました。時にはオーバーヘッドキックをやってみたり、シザースで遊んでみたり、エラシコをやってみたり、ヒールリフトをやったり、ドリブルしながらリフティングしてみたりしていました。

ウチの子どもたちは遊ばれている感じで、全く何もできない状態でした。この差は何だ、ウチはきっちり基本の練習をしていて、ローカルな大会でも優勝したりしていたのですが、明らかな差がありました。

「練習はあまりやっていない」という衝撃の答え

どんな練習をしているのか気になったので、その若者に聞いたら、練習はあまりやってないですと。毎日ボールを使って遊んでるだけですよと。その遊びの中で、楽しみながらサッカーをやっているだけですと。

どんな練習してるの??

決まった練習はやってないですよ!

毎日ボールを使って遊びのサッカーを

やってるだけですよ!

えぇぇ~マジですか!?💦

ご存じの人も多いですが、ブラジルではストリートサッカーが盛んで、これは100%遊びです。日本だと放課後、みんなで鬼ごっこやったりかくれんぼやったりと遊んでいる感覚で、ブラジルでは遊びのサッカーをやっています。

この遊びを通してスキルや創造性を養っている、楽しいから自然とスキルが身につくし、楽しいから生き生きするし、楽しいから創造性も出てくる、すごく良い環境ができています。

ブラジルの「遊びのサッカー」という文化

またブラジルと日本ではサッカーの歴史が違いすぎるのもあります。ブラジルはお爺ちゃんがプロサッカー選手だった、ひいお爺ちゃんがプロサッカー選手だったと歴史が長いです。

庭先で家族でBBQをやっている隣でビールを飲みながら、孫、子どもらと遊びのサッカーを通して元プロのお爺ちゃんらのプレーを見て真似をして楽しみます。まともに練習しなくても、遊びを通して相手との駆け引きを学んだりズル賢さを学んだりする、上手くなる環境がすでにあります。

日本とブラジルのサッカーの歴史の違い

日本はプロリーグができてまだ33年です。まだまだブラジルのような環境にはありません。この時の私は、楽しむという考えはなく、サッカーは基本が一番大事と思い、ドリブルの型のドリルみたいな反復練習ばかりやっていました。

シュート練習にしてもただドリブルからシュートを打つだけ、リフティングにしてもただ一人で黙々やるだけ。しかしこの練習だと相手が存在しないので、駆け引きも何もありません。実際の試合で生きる練習にはなっていませんでした。

当時の自分の指導を振り返って

この練習では創造性は皆無で、ただやらされている練習になっていました。サッカーは常に相手が存在しているわけで、相手なしの練習は全く効果がないとは言いませんが、これでは効果が半減してしまいます。

何よりも面白くない練習でした。サッカーは元々イギリス発祥で「祭り」から生まれたスポーツで、遊びとして楽しむスポーツです。つまりブラジルのように、遊びの中で相手と駆け引きをして楽しみながら練習しないと、なかなか身につかないし、伸びしろも半減してしまいます。

遊びの中にこそ駆け引きと創造性がある

そこから私のサッカー観は、教えなければいけないという考えから、サッカーの遊び方を身に着けてもらうという考えに変わりました。どんな練習でも常に駆け引きをする、いかに相手の逆をつくかのトレーニングがメインになりました。

この転換があったからこそ、選手一人ひとりの個性や創造性を大事にする、今の指導のベースができたと感じています。教え込む指導から、遊びの中で気づかせる指導へ、大きく舵を切った瞬間でした。この考え方は、その後の全ての指導に通じる軸になっています。

指導観が変わった今のスタイル

そして試合でも、私のサッカーを押し付けることはなく、その子の特徴、好きなプレー、得意なプレーを見て適材適所に配置して、選手が生き生きできるように采配するようにしています。

あの練習試合で受けた衝撃がなければ、今の指導スタイルにはたどり着けなかったと思っています。基本の反復も大切ですが、それ以上に、遊びの中で選手自身が考え、楽しみながら成長していく環境を作ることを、これからも大切にしていきたいです。あの一戦での悔しさが、今の指導の原点になっています。

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