ある強豪校の1年生チームを任された時、選手起用のやり方で大きく悩んだことがあります。選手の特徴に合わせてチームを作るべきか、それとも自分がやりたいサッカーに合う選手を集めてチームを作るべきか。この2つの考え方の間で、育成年代の指導者は常に揺れ動きます。私が実際に経験した悩みと、そこから見つけた自分なりの答えを振り返ります。
チームの作り方には2つの考え方がある

チームを作っていく上で、2つのやり方があると考えています。①適材適所という言葉があるように、選手の特徴を元にチームを作るのか。②自分はこんなサッカーをしたいから、それに合った選手をセレクトして配置してチームを作るのか。
おそらく多くの監督は②を選ぶと思います。しかし私にとって、これはものすごく悩んだ問題でした。それぞれに一長一短があり、簡単には決められません。この選択は、シーズンが始まる前のチーム作りの段階で必ず突き当たる分かれ道だと感じています。
「理想のサッカー」を貫くと直面する問題

②の、自分のやりたいサッカーに合う選手を揃えようとすると、9人までは揃っても残り2人が合うピースがいない、あるいはその2人のレベルが相当落ちてしまう、という問題が必ず出てきます。根気よく使い続けて成長させるというやり方もありますが、育成年代のコーチ・監督を務めてきて、完璧に選手が揃うことは今まで一度もありませんでした。
どうしても何かが欠けてしまいます。長いリーグ戦ではスタメンの11人だけ揃っていても戦えず、怪我人も必ず出てくるので、ターンオーバーを考えると控えの選手もそれなりに充実していないと、理想のサッカーでチームを作ることは難しいのです。
育成年代ならではの難しさ

プロであれば、監督がやりたいサッカーに足りないピースを移籍で獲得できますが、育成年代ではそうはいきません。理想があれば根気よく長い目で見ていくしかありませんが、意外と時間は全然ありません。
ただ、育成年代だからこそ、その理想に向かってトライ&エラーを繰り返して作り上げていく楽しさもあります。一方で、選手のレベルによっては自分の理想のサッカーが全くできないケースも多々あり、自分のやりたいサッカーではなく、限りある選手を使って全く違うサッカーをやらざるを得ない時もあります。
ここは、育成と割り切って負けてもよしとするか、育成は頭から外して勝ちにこだわるかで、対応が変わってきます。強豪高校であっても、年代によっては選手がいない場合はそうなってしまいます。
選手に歪みが出た経験から、起用のやり方を変えた

私の場合、自分のやりたいサッカーの理想はありますが、それをやると選手に歪みが出ることが多々あったので、選手の特徴を見て戦術などを組み立てるようにしています。ここでいう歪みとは、選手にあるポジションを与えても全然合っておらず、いやいやプレーを続けることになり、それを続けるとサッカーが面白くなくなってしまう状態のことです。
強豪校であっても、ポジションと選手の相性がずれたままシーズンを進めると、選手のプレーが萎縮していくのを何度も見てきました。だからこそ、まず選手の特徴を見極めることを優先するようになりました。
選手を見極めるために大切にしていること



その選手の得意なプレー、好きなプレーは何か。その子の性格は真面目か、いい加減か、やんちゃ坊主か。長男なのか次男なのか。サイズは、足は速いのか遅いのか。こうした細かいところまでフォーカスして、その子の特徴を見極めて選手起用をするようにしています。
私の中には持論があり、一部を紹介すると、FWは長男ではなく次男がいい、真面目な子ではなくやんちゃ坊主がいい、DFは長男で真面目な選手がいい、MFならコツコツできるタイプがいい、というように、もっと細かい基準を持っています。
これを把握するためには子どもたちと密なコミュニケーションが必要になり、時には親御さんにもヒアリングして、自宅での様子を聞くこともあります。なるべくその子がやりたいポジションで、自分の好きなプレー、得意なプレーが生きるポジションにしてあげることが重要だと考えています。試合の終盤で疲れた時に出るプレーは、自分の得意なプレー、好きなプレーになることが多く、それが決定的なチャンスを生み出したり、得点になったりする経験を何度もしてきました。
このやり方のデメリット

ただ、私のこのやり方は、その子の武器にフォーカスしてそこを生かし、伸ばすやり方なので、デメリットもあります。得意なプレーにフォーカスしている分、新しい発見はできないことが多くなるのです。
例えば、長男で真面目な子をセンターバックで起用していたけれど、実はFWをやらせたら得点する能力が高かった、というような発見ができないことがあります。特徴を伸ばすことを優先する分、別のポジションでの可能性を見逃しているかもしれないという迷いは、今でも指導をしながら感じています。
育成年代に正解はない

育成年代においては、何が正解で何が不正解なのかは正直わかりません。勝ちにこだわるか、育成に全振りして負けを良しとするか。この綱引きの具合は、チームの方針によっても大きく変わってきます。選手起用というのは、戦術以上に指導者の価値観が表れる部分だと感じています。
だからこそ、毎年同じ答えにはたどり着かず、選手が変わるたびに悩み直しているというのが正直なところです。今後も選手一人ひとりと向き合いながら、その都度の答えを探していくつもりです。


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