2026年6月13日(現地時間)に行われたFIFAワールドカップ2026グループB第1節・カタール対スイス戦では、PK判定をめぐって大きな議論が起きました。発端は前半13分に与えられたスイスへのPK判定です。
フロイラーがオフサイドポジションにいた可能性があるにもかかわらず、FIFAが半自動オフサイドテクノロジー(SAOT)の確認映像を即座に公開しなかったことで批判が集中しました。審判技術の精度と透明性、両方が同時に問われた試合でした。
W杯2026グループB第1節|カタール対スイス戦の疑惑のPK判定
前半13分、スイスの右サイドからのクロスに対し、FWブリール・エンボロが折り返し、MFレモ・フロイラーが反応した場面で、カタールGKマフムード・アブナダがフロイラーに接触しました。主審はPKを宣告し、VARによる確認が行われましたが、判定は変更されませんでした。エンボロが17分にPKを左下隅へ決め、スイスが先制しました。
問題となったのは、エンボロとフロイラーの両者がクロスの場面でオフサイドポジションにいた可能性があるにもかかわらず、SAOTの確認映像(3Dアニメーショングラフィック)が中継でもスタジアムの大型スクリーンでも表示されなかった点です。根拠のないまま判定の是非を論じる状況が生まれ、論争は世界規模に拡大しました。
FIFAの公式声明と後日対応
FIFAは試合後、公式Xアカウントで技術的不具合について説明し、あわせて関連画像を公開しました。
※クリックして中身を見ると翻訳して日本語で見れます。
During the Qatar vs. Switzerland match in the San Francisco Bay Area, a brief technical outage prevented the onside animation graphic from being generated ahead of the penalty awarded to Switzerland in the 14th minute. The issue was quickly resolved.
The workflow of the VAR was… pic.twitter.com/ONpWxXDPE6
— FIFA Media (@fifamedia) June 13, 2026
国内外メディアの報道|各紙の切り口と主な主張
【ESPN(米国)】FIFA、カタール対スイス戦のVAR論争を『技術的障害』と説明
FIFAの公式声明を軸に、「技術的障害がなければVARは正常に機能していた」というFIFAの立場を中立的な視点でまとめた記事です。FIFA公認審判のクリスティーナ・ウンケル氏は「肉眼ではオフサイドに見えたが、システムは極めて際どい判定だったと算出した」と述べ、SAOT自体の精度を擁護しました。
SAOTがVARとは独立して正常に機能していた点を強調しつつ、映像が表示されなかった経緯とFIFAが後日対応に追われた背景を丁寧に整理しています。技術の信頼性と情報公開の遅れを切り分けて論じた点が特徴です。
【Sports Mole(英国)】カタール 1-1 スイス:VAR論争が歴史的なワールドカップの結果を覆い隠す、ガリー・ネヴィルが意見を述べる
元マンチェスター・ユナイテッドDFでITV解説者のガリー・ネヴィルの発言を中心に構成された記事です。ネヴィルはハーフタイムの解説で「我々全員がオフサイドだと思っている。FIFAはSAOTのデータを持っているのになぜ見せないのか。
反証できる証拠がない限り、あれはオフサイドだ」と強く批判しました。さらに元イングランド代表FWのイアン・ライトも「映像を秘密にすることは不信感をさらに高めるだけだ」と同調しています。プレミアリーグやUEFAチャンピオンズリーグでは判定直後の映像公開が慣行となっており、W杯での対応との差が論争を大きくした点を問題の軸に据えた内容です。

【ゲキサカ(日本)】W杯で『一時的な技術的不具合』も…FIFAが物議のスイスPK獲得シーンで証拠画像を公開『オフサイドポジションとは示されなかった』
FIFAが後日公開した証拠画像の内容を詳報した記事です。今大会では開幕前に全選手の3Dスキャンを実施済みで、骨格データをもとにより精密な自動判定が行われる仕組みになっています。VARが確認した2つの場面でフロイラーおよびエンボロのいずれもオフサイドポジションにはなかったことを、FIFAが公開した静止画をもとに報じました。
SAOT映像がリアルタイムで表示されなかった理由についても技術的な背景から丁寧に解説しており、判定の根拠と透明性の問題を整理して読める内容になっています。日本語メディアの中では最も技術的な観点から踏み込んだ記事です。

【サッカーキング(日本)】カタールがW杯初の勝ち点獲得!…スイス相手に粘って劇的後半AT同点弾でドロー
PK論争よりも試合全体の流れとカタールの歴史的達成に焦点を当てた記事です。後半アディショナルタイム94分にDFブーアラーム・フーヒーが決めた同点ゴールにより、前回2022年大会でグループリーグ全3試合を敗退したカタールがW杯史上初の勝ち点を獲得しました。
自国開催だった前回大会では3戦全敗でグループ最下位に終わっただけに、敵地での勝ち点獲得は国内で大きく報じられました。一方、スイスのグラニット・シャカは試合後に「今日のパフォーマンスでは満足できない」と自チームを厳しく批判。PKで先制しながら勝ち点3を逃した点を問題視したと伝えています。

【ファンの声|X(旧Twitter)より】W杯で物議のPK判定 世界のファンが語る“違和感”と“疑問”
判定が下された直後からX(旧Twitter)では世界中のサポーターによる投稿が相次ぎました。オフサイドへの疑念、ルール変更への言及、FIFA声明への反応と、受け止め方はさまざまでした。国内ユーザーの主な投稿を紹介します。
「カタールの失点PKはオフサイドだと思うんだけどなあ リプレイかCG出してくれないかなあ いきなり半自動オフサイのAIに頼り切った誤審じゃないよね?」
「スイスの先制PKにつながったシーンでオフサイドじゃないかって声があるけど、ルールが変わってるから普通にセーフなんだよね。オフサイドだけじゃなく今大会で変更もしくは追加されたルールがあるから頭整理していかないとね。」
「W杯で起きた“疑惑のPK判定”にFIFA声明 証拠公開で次々反論…不具合認めるも「判定に影響なかった」(THE ANSWER)やっぱりか オフサイドっぽかったよな」
【Q&A】半自動オフサイド技術SAOTとは? FIFAの説明と透明性への疑問を整理
Q1. SAOTとはどのような技術ですか?
SAOT(Semi-Automated Offside Technology:半自動オフサイドテクノロジー)は、カメラとセンサー、AIを組み合わせてオフサイド判定を補助する技術です。スタジアムに設置された複数の専用カメラとボールセンサーが選手の位置やキックポイントを高頻度で計測し、オフサイド判定を支援します。
従来のVARが手動でラインを引く方式に比べ、判定時間が平均70秒から約25秒に短縮されます。判定結果は通常、3Dアニメーションでスタジアムや中継画面に表示されます。今大会では開幕前に全選手の3Dスキャンも実施されており、骨格データの精度が従来より高い状態で運用されています。
Q2. 今回の試合でSAOT映像が表示されなかった理由は何ですか?
FIFAは、一時的な技術的不具合により、オンサイドを示すアニメーショングラフィックが表示されなかったと説明しました。VARのワークフロー自体には影響がなく、通常の手順でオフサイド確認が行われ、エンボロ・フロイラーのいずれもオフサイドポジションとは示されなかったとしています。
元イングランド代表FWのイアン・ライトは「主要リーグでは毎週オフサイドラインを公開している。映像を秘密にすることは不信感をさらに高めるだけだ」と指摘しました。
Q3. 過去のW杯でも同様のVAR・オフサイド論争はありましたか?
VARが初導入された2018年大会では、判定に時間がかかる点が問題視されました。SAOTが初導入された2022年カタール大会でも、判定の透明性への疑問は繰り返し浮上しています。
ガリー・ネヴィルは今回の発言の中で「前回の大会でも同じことをした」と述べており、W杯での映像非公開は繰り返し批判を受けてきた課題です。欧州主要リーグではオフサイド判定ラインの即時公開が標準化されており、W杯でも同水準の透明性を求める声は根強くあります。
私の監督経験を通して痛感した、オフサイド判定と“納得感”の重要性
高校サッカーの監督を務めていたころ、オフサイド判定をめぐって選手や保護者から抗議を受けたことが何度かありました。なかでも強く記憶に残っているのは、県大会の準決勝での出来事です。後半終了間際に決めたゴールがオフサイドで取り消され、その後PK戦で敗退しました。選手たちは「絶対にオンサイドだった」と口をそろえていました。
試合後に映像を確認すると、ピッチ上で見ていた感覚とは異なる角度が映し出されていました。走っていた選手の肩のラインが守備側のDFの肩よりわずかに前に出ており、オフサイドの判定は映像上では正しかったのです。ただ、選手からすれば「なぜオフサイドなのか」が試合中にはわからないまま終わっていました。
翌日の練習で映像を一緒に確認しながら説明したとき、選手たちは初めて納得していました。「映像を見せてもらえたから受け入れられる」と言った選手の言葉が今でも頭に残っています。見えなければ信じにくい。判定の正しさだけでなく、根拠が示されるかどうかが納得感を左右するのだと痛感した出来事でした。今回のW杯での論争は、プロの舞台でも本質は同じだと改めて感じさせてくれました。
【まとめ】オフサイド論争から読み解くW杯2026の審判技術と透明性の課題
今回のカタール対スイス戦で問われたのは、SAOTの精度そのものよりも、判定プロセスを即座に可視化できなかったことへの不信感でした
PKに至る経緯と判定の事実
前半13分のPK判定はVARのオフサイドチェックを経ても変更されず、エンボロがスイスの先制点を決めました。両者のオフサイドポジションの可能性が指摘されましたが、SAOTの確認映像はリアルタイムで表示されませんでした。
FIFAの説明と後日の対応
FIFAは「一時的な技術的不具合」と説明し、VARの判断プロセス自体は正常に機能していたと主張しました。後日、証拠画像をXで公開し、フロイラー・エンボロのいずれもオフサイドポジションではなかったと説明しています。
各方面の反応
ガリー・ネヴィル(ITV解説・元マンチェスター・ユナイテッド)はFIFAを「独裁」と表現し、映像を公開しない姿勢を批判しました。イアン・ライトは主要リーグとW杯の対応の差を指摘し、透明性の欠如を批判しました。FIFA公認審判のクリスティーナ・ウンケル氏はSAOTの精度を擁護し、判定自体の正確性は保たれていたと説明しました。
透明性と技術の信頼は別問題
SAOTの精度が高くても、判定結果をリアルタイムで公開できなければ判定への信頼は得られません。「判定が正しいかどうか」と「判定プロセスが見えるかどうか」は、分けて考える必要があります。W杯の残り試合でFIFAがどのように運用を改善するかが引き続き注目されます。
ブンデスリーガで起きたオフサイド判定を巡るVAR介入の物議について知りたい方は、下記の記事をご覧ください。


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