試合の最初の5分で、いつも子どもたちが固まってしまう。格上の相手になると、普段の力がまるで出ない。気づけば早い時間に失点して、そのまま攻め込まれる。少年サッカーの指導をしていると、何度もぶつかる悩みだと思います。
私は富山の強豪校で左サイドバックとして全国大会に出させてもらいました。引退後はコーチを3年、監督を8年やってきました。でも正直に言うと、試合の入りで一番苦しんだのは、選手時代の私自身でした。今日はその経験から、入りを変えるために監督としてやってきたことを、そのままお話しします。
私自身が「入りの悪い選手」だった
私が現役の頃は、軍隊のようなチームでした。練習からいつもピリピリしていて、試合前も当然張りつめている。その緊張で体が固くなって、本来のプレーができない試合がたくさんありました。入りは毎回、最悪だったんです。
特に自分たちより格上が相手だと、萎縮してしまう。本当はもっとできるはずなのに、動きが固すぎて100%を出せない。今思えば、脱力ができていなかったんです。
体が固まると、こういう失点をする
脱力できていないと、足がまったく動きません。最初の5分10分、チームとしても個人としても機能しないので、当然失点するし、攻め込まれます。
失点のかたちにも特徴がありました。普段なら1対1で負けない子が、スピードで置いていかれてシュートを決められる。空中戦で負けない子が、体が固いせいで最初のジャンプの一歩が遅れて、競り合いで後手に回る。個人で崩されることが多かったんです。これは技術の問題ではなく、体がこわばっていただけでした。
入りを変えるためにやったのは、とにかく「脱力」
監督になってから私がこだわったのは、難しい戦術ではなく、子どもの体をゆるめることでした。
まず、アップに普段の基本練習でやっている脱力リフティングを入れます。さらに、音楽を流したり、各自イヤホンで好きな曲を聴きながらアップさせたりしました。狙いはリラックスして脱力することです。アップからピリピリさせず、和気あいあいとした空気を心がけました。
それに加えて、全員をグラウンドかロッカールームで仰向けに寝かせて、瞑想をさせます。呼吸を整えて心を落ち着かせたあと、自分の理想のプレーや、得意で好きなプレー、過去の成功体験を、できるだけ鮮明にイメージさせるんです。
一番の土台は、普段の関わり方
ただ、当日だけ整えても限界があります。一番効いたのは、普段からの子どもとの関わり方でした。
私は普段から、子ども一人ひとりと友達のように積極的に話すようにしていました。もちろん厳しくする時もありますが、オンとオフをはっきり分ける。オンの時は多少厳しく、オフの時は友達感覚で接する。監督にある程度の威厳は必要ですが、威厳がありすぎても子どもは過緊張になってしまいます。
この関わりがあると、練習や試合前のアップの時点で全員がリラックスできます。そうすると、チームとしての入りも自然と落ち着いていきました。
保護者の方へ。かける言葉は一つでいい
最後に、親御さんにお願いしたいことです。試合前は、何も言わないのが一番だと思っています。強いて言うなら「楽しんできなさい」、この一言で十分です。サッカーは元々遊びで、楽しまないといけないものだからです。
経験者でない親御さんほど、あれこれ言ってしまいがちです。試合のあとも「試合どうだった?」ではなく「今日は楽しめた?」と聞いてあげてください。その反応を見て、「良かったね」か「またチャンスあるよ」、それくらいの短い言葉で十分です。特に技術や戦術の話はしないほうがいいでしょう。親御さんがサッカー経験者でも同じです。子どもがアドバイスを求めてきた時だけ、話してあげてください。
今日からできること
- アップに脱力リフティングを入れ、音楽で空気をゆるめる
- 試合前に仰向けで呼吸を整え、得意なプレーや成功体験をイメージさせる
- 普段からオンとオフを分けて、子どもと友達のように関わる
- 保護者は「楽しんできなさい」「楽しめた?」の声かけにとどめる
入りの良し悪しは、才能ではなく、試合前にどれだけ体と心をゆるめてあげられるかの差です。そこを変えるだけで、子どもたちは本来の力を出しやすくなります。


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